誰が乗つて走つてゐるのか電車のひびきがここまでやつて來る窓を 通して シヨパンの音樂を打ちくだいて私の心をひきずり出すやうに お前は こんな私の所までやつて來る椅子に坐つて一人でゐたいと思つてゐるのに雨は もう降らないらしい くたびれたやうな 私の唇にも しやべりたい氣持がうつる荒れはてた 日常に完成されたやさしさを求めてゐた ひどいまちがひに 私は氣がついたのだ